しょんべんおばけ日記

40代会社員 Agender Aromantic

北海道のトランス医療の問題点

性別変更の生殖腺手術要件が10月に最高裁違憲、無効となる判決がでました。

私の受け止めとしては、LGBT理解増進法の議論は非常に残念なありさまだったので、今回の違憲判決には本当に驚きました。とても嬉しいです。

地元の北海道新聞の記事は比較的好意的な扱いだと思います。(ときどきヘイト団体の記事を掲載したり差別的小説の書評を載せる以外は)

 

今日の北海道新聞では「くらし」のページでGID学会の中塚理事長のインタビューとともに道内の当事者らの反応などが大きく取り上げられました。

www.hokkaido-np.co.jp

 

こちらはトランスXコミュニティの川島さんへの取材。

www.hokkaido-np.co.jp

 

記事では、手術が保険適用で行えるようになったもののホルモン治療は保険適用外のまま。手術は実質自費診療であること、保険適用での手術が認められている医療機関は道内では札医大病院と札幌中央病院の2カ所しかないことが報じられていました。

やっと地元紙がこのくらしや医療の話題として扱ってくれるのか!という喜びとともに、「なぜ札幌医大病院に取材に行かないのか?」という疑問もわきます。

 

さっぽろレインボープライドなどで配布した「トランスジェンダーを知るためのブックガイド」にも少し書いたのですが、北海道のトランス医療の実態に私は大きな不満を持っています。

・札幌医大初診抽選制と絶対に予約の取れない婦人科問題

まず、認定施設である札幌医大病院を受診すること自体のハードルが高いです。治療にたどりつくための待ち時間がとても長いのです。

初診が抽選式で、数ヶ月から2年以上かかる状態がずっと継続しています。その間、性別への違和感や社会的な問題を緩和するための手段や情報提供もジェンダークリニックからはなく、地域で公開されている医療情報も極端に少ないです。道内の一般の医療機関は性別不合での受診を今でもほとんど断っているようで、多くの当事者は一般の病院でホルモン療法さえ対応してもらえれば相当助かるにも関わらず、診療してくれる病院がないために遠方から札幌医大まで通う、という問題がいつまでも改善されません。

また、実際に通院を始めても「性別不合」の診断がとれ、さらに身体治療の審査が通るまで注射一本打ってもらえません。診断には一般に半年以上はかかるのですが、さらに婦人科の予約がまったく取れないという問題が横たわります。私自身、単に婦人科の予約をとるためだけで半年ほど足踏みしている状況です。

 

こちらは北海道が公開している性別違和の診療を受けている医療機関リストです。道内に5カ所しかありません。

性別違和等の診療について - 保健福祉部福祉局障がい者保健福祉課

診療している病院は他にもあるはずですが、情報を探し、自分で病院と交渉する必要があります。偏見に満ちた対応をする医療者も少なくない中、それを当事者が行うのはメンタルヘルス上のリスクもあります。

渕上道議がこのような医療アクセスの状況を行政として改善できないか北海道議会で質問してくれたことがありますが、道側は関心を示しませんでした。

 

・札幌だけ未ホルの乳房切除が保険適用されない問題と、差額ベッド代

現在、ホルモン治療前の乳房切除には健康保険を適用できます。ところが札幌医大病院ではなぜか保険適応せずに、全額自費での支払いを求めています。病院側からの説明では、保険適用して胸オペ手術後にホルモン治療を受けた場合、あとから差額を健康保険協会などから請求される可能性があること、また、患者にあらかじめ、「今後ホルモン治療をしません」という約束を求めることもできないことを理由としています。

しかし、このような解釈を他の認定病院はしておらず、ふつうに保険適用しています。また、札幌医大では性別違和をもつ患者の入院時は個室対応するというきまりになっているそうで、差額ベッド代が上乗せされます。法律的な解釈は私には分かりませんが、少なくともこれを患者側が負担しなくてはならないのか、説明が必要だと思います。

(ちなみに、乳腺外科受診時に差額ベッド代は必要なのか質問しましたが教えてもらえませんでした。手術を行うのは別な病院だから、だそうです)

(ちなみに噂だと、乳房切除の保険点数が低く、保険適用すると費用が足りないらしい、とか、ホルモン注射は全額自己負担なのはわかるとしても、よく見たらさらに割り増しされている…などという話もあります。真偽は不明です。)

乳房切除は本来一般の美容形成でも可能なはずですが、道内で対応している病院は1カ所しか私は知りませんし、そもそも入院設備がない病院では不安があります。

・治療の選択肢について十分な情報提供がない点

札幌医大に限らず精神科で性別違和の相談をすると「どこまで望みますか」という質問をされます。どの治療を受けるかは本人の自己責任の範囲であり、医師は意思決定の支援をする役割であるということになっています。ところが、実際にはニーズに合わせた情報を十分に提供してくれない、という問題があります。

 

7月に発売された『トランスジェンダー入門』(集英社)で、男性への変更についてはこれまでも生殖腺の除去を必要としなかったケースがあることを知りました。私は地元の当事者グループには時折顔を出しますし、書籍についてはまぁまぁ見ているほうだと思いますが、このような情報を私は聞いていませんでした。

 

以下は、朝日新聞の8月の記事ですが、50代トランス男性で閉経後のため手術なしで性別変更が認められたケースが3例、GID学会で報告されたという記事です。つまり3月の学会開催時点で札幌医科大学病院GIクリニックはこの例を把握していたはずです。


手術受けずとも性別変更 女性から男性へ 裁判官により分かれる判断:朝日新聞デジタル 

digital.asahi.com

 

ですが、私はこの情報を教えてもらっていません。私は40代で卵巣がありますから、当然これは私の治療の決定に影響のある情報です。私自身、これまでも精神科と婦人科の両方で子宮のみの切除という選択肢についての医学的な面からの意見を求めていましたので、この情報が与えられなかったことには不信感を覚えています。

 

手術の選択は自己責任で行うものです。医師との面談でも私は「自己責任で決定します」と宣言をしています。ですがそこでいう「自己責任」とは医学的な情報までも自分がすべて収集し判断する、というようなものであるわけがありません。

主治医は経験豊富な専門医であり、礼儀正しいひとです。不必要なダメージを与えることを避け、なるべく治療がスムーズに進むよう適切な対応をしてくれています。

問題は地域医療のありかたや性別不合の診断のガイドラインにあると感じます。

 

今回北海道新聞が医療の問題としてくらしのページに相当な分量を取って取材して書いてくれたことに感謝します。(一方で「慎重論」をトランス女性から収集するというやり方に過度に傾く恐れがないかも注目していこうと思います)

 

待望の「トランスジェンダー入門」の感想その1

待望の「トランスジェンダー入門」とうとう発売されましたね!

なんでみんなバリバリのシスジェンダーのつもりで生きてるのか謎だったので、もうみんなトランスになるべきでしょ、入門入門💙とか思ってわくわくで読みました。

ざっくり読んだ感想というか第一印象を書き留めておきます。

 

タイトルはやっぱ、「トランスジェンダー問題」に似た感じにしたかったんでしょうか?

トランスジェンダー問題の訳者による日本の状況の解説がなかなか面白いというか、あれがないと日本の読者にとってわかる感を持ちづらいかなと思ったので、この「入門」はセットで売りたいですね!

「問題」の方はわりと政治性が豪速球で、例えば刑務所やめろとかセックスワークのこととか、めちゃくちゃ面白いし目から鱗なんだけど、とにかく話がデカくて、おおっおおっ!てなってました。章のタイトルが「国家」とかですもん。やばいよね💛

 

一方今回の「入門」は初心者向きの新書ですから、さすがに読書の苦手な私でもつらくなく読める語彙や文体になっていて、扱っているテーマも幅広く理解度も高いです。わかりやすいのをありがたがってすみません。

定義的な部分から始まり、誰が語るのかの権力性批判もあり、私の大好きな医療や法律の話もしっかり。今後図書館に「トランスジェンダーの定義は?」的なリファレンスを求めるひとがいれば、この本が第一に紹介されるのでしょう。

今回成立したLGBT法では、よくわからない理由で「ジェンダーアイデンティティ」が採用されたのですが、法案作成の過程で「性自認」「性同一性」に違う意味が勝手に与えられてしまったことに腹が立っていたので、これら3つの言葉に意味の違いがないことが断言されているの、とても良かったです。

MTF/FTM」などこれまで使用されていた言葉が今ではあまり使われなくなった理由などが書かれていること、定義や説明ではうまくとらえきれない人々がいることなど、トランスのことを語るとき、「言葉」って考え方を共有することなんだなぁって思いました。

「身体の性」「心の性」というフレーズを使うことの問題点がどう解説されるのかは、けっこう期待していました。まだまだ報道などでも多く目にしますし、とりまわかった気になってもらわないといけないときには使うんでしょうが、私は嫌いなんですよね。

特に「身体の性」の解説は良かったです。「心の性」解説はなんか物足りない気持ちがします。元々ぼうっとした言葉でもありますが、そもそも「ジェンダーアイデンティティ」というもの自体にシスジェンダーの人の多くがぼんやりとした理解をしていることが「心の性」という言い回しの使い勝手の良さを生んだんじゃないかと思うので。

ただ、発達心理学的な説明とか医学的なやつとかはあんまなんていうか、すでに本あるしな。深入りする必要ないかもしれません。なんかトランスにしかないもの的な扱いすんな的な成分がもっとほしい気はしました。結局私もよくわからないし。

LGBT解説本や研修などで多用される「性のグラデーション図」やジェンダーブレッドパーソンとかの問題点の検討が特にないこともちょっと不満かな。ま、トランスの話だし、「身体の性」批判が充実してたからいいか!

 

楽しくて面白かったのはp.108 からの「メディア〜表象と報道」の例示ですね。

Netflix のドキュメンタリー「Disclosure トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして」の話から、映画のなかのトランスの描き方のダメ出し祭り。

「彼らが本気で編むときは」など日本の作品も出てきます。ひとつ引用すると、

医学的な移行をしたせいで死ぬ 例:「ミッドナイトスワン」

…など、説明が端的ですこぶる良い。手を叩いて喜びました。

とはいえ、それらダメ作品たちも私はまぁ、楽しんできたのですが。「ミッドナイトスワン」は観てませんが、「リリーのすべて」とか「彼らが本気で編むときは」とかね。(ちんこいっぱい編んで供養するのはさすがに当時も微妙だとは思いました。ちんこ自体には愛着のあるタイプのトランスかなという受け止めをしています。排尿には便利)

 

自分の関心としては4章の医療のあたりがめちゃくちゃ面白かったです。

脱病理化やIC(インフォームドコンセント)モデルの話は、もっといっぱい聞きたい!

今後国内の報道でトランスの医療扱うときには、この視点での取材がされるんですよね?すごく嬉しいです。ほんと不満だったので。

ただ、批判というか疑問というか、やっぱ批判か。「正規ルート」と「闇ルート」という表現を使って、ガイドライン通りの医療ではないものを悪いことのように扱うことには問題を感じます。

実のところ、ガイドラインは患者(クライアントのほうがいい?)本人のためにあるというよりは、医師や医療機関母体保護法や患者の配偶者の苦情から守るためにあるように私には感じられます。地方在住で仕事がそんなに休めるわけでもないときに、やたら時間と手間がかかる、なんなら人権侵害的なステップを含む「正規医療」をどうしてそんなにありがたがらなくてはいけないのでしょう?当事者たちも実際けっこう両方利用してません?

医師免許のある医師から自由診療でホルモンを投与してもらうことや、美容整形での乳房切除って、その「ICモデル」とは違うんですか?

この「入門」では、ガイドライン外の医療を「闇」と呼ぶ意図も、その「闇」医療の範囲も明確ではありません。この点気になりましたので、まずは書き留めておきます。

医療については自分の愚痴ふくめ、だれかにちょっと聞いてほしい気持ちがあるので、あらためて書けたらいいなと思います。

 

あきらさん、ゆと里さん、集英社さん、素晴らしい本を超スピードで出版してくださって本当にありがとうございます。大好きです。

この先、もっと書いてくれる人が増えますように

 

 

ところで、読んでいてぽろっと出てきた愛読者カードが性別欄男女二択なのは笑ってしまいました。上からノンバイナリーって激太マジックで書こう。

集英社新書といえば、吉永みち子性同一性障害 性転換の朝(あした)」を思い出します。

2000年の「性同一性障害 性転換の朝」と2023年の「トランスジェンダー入門」、対比して読むとふたつのパラダイムシフトが経験できる感じでお得です。

2000年って、トランスジェンダーの本って数えるほどしかなく、また検索性も悪かったんですよ。スマホもないし、インターネットとかも全然情報少なかった時代で。OPACも一般人が使えるようになったの、そのころですよね?

いま個人が発揮できる情報収集能力をつい当たり前だと思ってしまうけど、当時の私は書店で見かけるかどうかに依存していました。ですから吉永さんの新書はありがたかったです。その直後に「性同一性障害特例法」ができたわけで、この本は性同一性障害への社会の好意的な受け止めに貢献したと思います。集英社さんありがとうございます。

そういえば「LGBTとハラスメント」「差別は思いやりでは解決しない」も集英社新書でしたね!

やば、積んでたわ!!

 

『パレードへようこそ』上映会感想

2023年5月28日開催の映画上映会の感想です。

書いたまま公開せず忘れていました。

 

 

ノマドさんの映画上映会、お寺シネマ@覚王寺で『パレードへようこそ』を鑑賞してきました。

ノマドさん、覚王寺さん、素敵な上映会をありがとうございました。

 

www.cetera.co.jp

 

実はこの映画気になりつつも、2014年の映画とちょっと古いこともあり観たことがなかったのですが、五輪反対デモで知り合った方からちょうどこの映画のお話を聞いたばかりだったので、とてもありがたいタイミングの上映会でした。本当に楽しかったです!

 

舞台は1984年の英国、ゲイとレズビアンが炭鉱労働者のストライキを支援する物語で、時代的にもテーマは重々しいものの、音楽やダンスが物語をぐっと軽やかに魅力的にしています。

強力にエンパワメントされる映画であるのに、上映会をみたあと、なぜかぐったり疲れてしまって、なんでだろう?と、もやもやしています。

ひとつには、友人と感想を語り合ったことで今の私たちが置かれている状況をどう受け止めていいのか悩ましい点にあるのかなと思う。

 

ノマドさんのトークで「これは普遍的な物語だ」「この作品はクィアパルムを受賞しており、是枝監督の『怪物』も同賞を獲った」と紹介されたのですが、上映会のあと友人と食事をしながら「モヤるよね」と話し合いました。『怪物』のプロモーションでは、是枝監督は「LGBTQに特化した話ではなく少年の内的葛藤の話と捉えた」とコメントしていて、このように「普遍的」という紹介をされることには、差別的な文脈を感じる、という指摘がネット上ではけっこう出ていて。シスヘテの映画のときには「普遍的」なんて言われない。「普遍的」というキャッチコピーは、同性愛を異常性愛として扱ってきたシスヘテ中心主義的な前提の上に留まっている。そういう意味ではこの映画に「普遍的」とか言われると(ハイハイ、シスヘテ目線シスヘテ目線)とか思う。

ノマドさんのトークでは、この映画が古く感じないことをむしろ残念に思うと語られていて、今ここで、生身の人間がはっきりとそう言ってくれることがとても嬉しかったです。

 

LGBTQの権利を後退させるために、特にトランスジェンダーの女性を標的としたヘイトスピーチが横行している2023年の日本。LGBTQコミュニティの当事者らや家族すらも関心を持ったり一緒に怒ったりしてくれず、むしろヘイトスピーチに影響を受けてしまっているような厳しい状況のなかでこの映画を観ると、映画の最初のほうで炭鉱労働者のひとがゲイバーで行った、遠くの人が自分たちに連帯を示してくれることへの感謝のスピーチにはちょっと感激した。

「普遍的」という言い回しは典型的には「これはLGBTの物語ではない。普遍的な愛の物語だ」みたいなコテコテのキャッチコピーとして多用されてきたが、今回の映画は恋愛や性愛の物語ではなく、労働運動との連帯の物語なので、私自身はそんなに違和感を感じてはいない。

いま私が疲れているのは、映画の中のレズビアンとゲイが眩しすぎることかもしれない。

なぜ私は2023年に、こんな鬱屈した不信感を持って生きなくてはならないのだろう。

80年代のLGBTの人々を取り巻く環境に比べて今は格段によくなっている。医学的にも社会的にも、考え方は大きく変わったし、情報はとても増えた。同性婚が法制化された国もずいぶん増えている。しかし、映画の中のレズビアンとゲイの人々のタフさ、明るさ、仲間への信頼は私にはない。

いま、LGBT法案をめぐり、差別的な前提のもと当事者らの実態や必要性と乖離した議論がなされている。三案出て紛糾しているこの時期に、「どうしてもこの映画を」と言って上映してくれる人々はとても良くわかっている人々だ。しかし、私はその良い人たちの言葉の端々に(でもやはり差別的なんじゃないか)という目線を向けずにいられない。

 

2019年以降、一部のフェミニストがトランス差別をやり出し、右派のみならず左派もそれにほいほい引っかかり、数多あるLGBTQ団体も必ずしも「トランス差別をやめろ」とは打ち出してくれない状況は、私にけっこう根深い不信感をもたらしている。LGBTQフレンドリーな人々や当事者ら、トランス医療に携わる医療者など、味方であるはずの人たちへの猜疑心から逃れられない。

この映画のLGの人々は、差別的な人々と交流し、しっかりとした人間関係を築いた。

なら私も、差別的なひとびとにも多様な人生経験があり、コミュニケーションをとれば関係性は変わりうることを信じることができないだろうか。

偏見も差別も暴力も身近にある社会で、仲間への強い信頼とプライドを持ちユーモアをもって強かに生きるこの映画の登場人物たちはなんだかとても眩しい。

 

そんなわけで、今日はとても疲れた…

北海道のLGBT理解促進セミナー 感想(お前らだろ「余地がない」って言ってるのは)

北海道主催のLGBT理解促進セミナーを聞いた。

やっているのは北海道環境生活部くらし安全局道民生活課。

テーマは「性のあり方の多様性の理解と認め合う職場や地域づくり」

講義は2部構成で、道の職員から「性のあり方の多様性(にじいろガイドブック)について」を30分解説し、NPO法人L-Portの講師が「多様な性を生きる私たちのこと」と題して45分講演。最後に質疑応答と道からのお知らせがあり、合計2時間弱。2023年2月、zoom開催。

 

にじいろガイドブックのDLはこちら↓

LGBT(性的マイノリティ)等に関すること - 環境生活部くらし安全局道民生活課

 

道職員はさくさくさくさくと、「マイノリティの人権を守るとこんなにいいことがあります、顧客から信用を得ることができます、明日からでも取り組めます、ナントカ指標がどうとかでこのような手続きで取得できます」などと要領よくテキパキテキパキ説明してゆく。典型的な「お役所のダイバーシティ推進政策」って感じで、マイノリティを包摂すれば役に立ちますよ的な目線にちょい心が折れる

講師のL-portの人もよく準備してあってめっちゃ面白かった。

内心、(ずいぶん良い職場にお勤めで…)とか気持ちがじめっとはしたけれど、適切な対応が取れている職場の話をいろいろと聞くのは楽しい。

 

なんか聞いてみてすごく、役所の人って面の皮厚いんだなぁって思った。

お前らだぞ「余地がない」って言ってるのは。

道は同性パートナーのいる同僚に結婚祝いひとつ出さず、孤立させ、退職に追い込んだ自分たちの職場をどう思っているんでしょう?ヤバすぎでしょ。

 

同性パートナーのいる道職員に結婚や扶養の認定を認めない対応をした北海道を訴えた〈元道職員SOGIハラ裁判〉という裁判がある。

被告である北海道は「事実上婚姻関係と同様の事情にある者に同性パートナーを含む余地はない」と主張している。道は解釈で同性パートナーを福利厚生の対象に含むことが可能なのにそれを拒み、この元職員は職場で孤立し退職に至った。裁判で他ならぬ道から「余地がない」という冷淡な言葉が発せられたことを、この講演を行っているこの優秀そうな職員が知らないはずはない。

私は道民としても、道は率先して性的マイノリティに対し平等な対応をしてくれるものと期待しており、また自分の職場にもそれを足場として取り組みを提案したいと考えていたので、この裁判での道の対応には憤慨している。

当の北海道がこんな人権を無視した対応していながら、このセミナーの担当者はよく恥ずかしげもなくこんなにキッパリと明朗な口調で「福利厚生を」とか言えるものだなと思った。

 

私も事前質問でパートナーシップ制度導入の見通しなどをフォームに記入しておいたけど、セミナーの中では何も言及はなかった。

 

 

LGBTQの人権、10番目にのってるから読んでねって言ってたやつ。

北海道人権施策推進基本方針について - 環境生活部くらし安全局道民生活課

うーん…行政の取り組み、市民側も情報を集めたり意見言ったりした方が良さそう。窓口にいろいろと問い合わせとかしてみたらいいのかなあ?

直道のメッセージには「インターネットによる人権侵害」について書いてあるからみんな、オンラインでの人権侵害に反対する動画を作って応募してねっていうんだけど、インターネットよりも政治家のが悪質でしょ。何なの?「隣に住んでいたらいやだ」って。

自民党は保守議員を追放しろ」って動画作って送ったろか。

 

そう言えばパートナーシップ制度については以前、渕上綾子議員が北海道議会で質問してるのを見たけど、道の返答はゼロ回答って感じで、内心絶対にやりたくないのがみえみえだった。

 

北海道議会会議録 (詳細検索|北海道議会会議録検索システム)で検索してみたら、渕上さんが性的マイノリティへの対応について教育や住宅など複数の部門に対して、「にじいろガイドブック」の内容を踏まえた対応をしているかを質問していた。

えらっ!コツコツやってる!えらっ!

今回のセミナーでも、例えば道営住宅に同性パートナーの入居資格を認めることにしたとか、道も取り組んでますよアピールがあったのは、この質問を受けてのことなんだろう。それにしたって、ただしパートナーシップ制度のある市に限る、とかいう条件がついていて、対象拡大したといえるレベルではない。国交省も住宅確保要配慮者について自治体に対応を求めている。ほとんどの都道府県はLGBTQをその要配慮者に含めているってついさっき「セクシュアルマイノリティと医療福祉教育を考える全国大会」で聞いた。しみったれなことをしてないで、全部の道営住宅に対象拡大してほしいものだ。

 

 

元道職員SOGIハラ訴訟の裁判の記事。

「性的指向による不公平なくして」 札幌・SOGIハラ訴訟:朝日新聞デジタル

 

全体的に見るとこのセミナー自体の出来は良かったと思う。

基本の情報も最近の話題も充実しているし、道の職員も講師も話は面白い。(トランスジェンダーを表すイラストが変だったけど指摘しといたからきっとなんとかするだろう)

 

しかし、パフォーマンス向上、多様な人材を活用しイノベーションを…的な、役に立つマイノリティを歓迎します的なやつをたっぷり聞かされても、それ「人権」ちゃうよなぁ

 

ワクチン、性別、苦情

大杉さんのnoteを読みました。

めちゃ良くてプリントアウトして我が家の「良いことファイル」に綴じて何度も読んでいます。

 

男と女も元号もいらない|大杉 雅栄 @ohsg1m #note https://note.com/s_ohsg1/n/nb7041b838ea6

 

元号って、拒絶してもいいんですねぇ

なんだか変なボタンをかちっと押された感じがしたので、私もコロナワクチンの窓口に苦情の電話をしてみました。もしや私は影響されやすいのでしょうか。

以下はその内容です。

 

 

先日ワクチンを打ったのですが、気になることがありました。

私は問診票の投薬内容にテストステロンと記入していたのですが、医師からその理由を質問されたのが、不必要な質問ではないかという点です。

そのときの医師の態度が終始ため口でこどもに対するような話し方をしていて、私は軽んじられていると感じたので、「答えたくありません」と拒否しました。

通常私は、医療者には投薬や病歴をすべて申告しています。ですから今回も、投薬欄に「テストステロン」と記載し、看護師らしき人から「科だけ書いていただけますか?」と言われたので「精神科」と書いたのです。本来はテストステロンの使用を申告する必要はないとは思いました。トランスジェンダーであることやホルモン治療をしていることがワクチンに影響があるという情報はなさそうですから。

前回も同じ会場でワクチンを受けていますが、問診の性別欄は無記入でもよいという対応をされており、前回の医師はテストステロンについても何も質問しませんでした。(名前を検索すると北大の研究者のようでした)

今回も私は性別欄にチェックをつけていませんがなにも言及されなかったので、この会場のスタッフの対応は信頼できると判断し、今回も投薬内容を記入しました。

ところが今回担当した医師はデリカシーのない態度で「これは注射?なんで打ってるの?」と聞いてきたので、なんだかこの人は最初のあいさつからして話し方がちょっと…とうてい信頼感を持てない、と感じ「答えたくありません」と拒絶しました。

医師は、「ならいいよ」って感じですぐ引き下がったのですが、無関係な質問をしないでほしいです。これが関係のある情報なのであれば私が損をしますので、特別ていねいでなくてもいいけれど、ふつう程度には信頼感を与える言葉づかいをしてほしいです。

 

トランスジェンダーの人にはけっしてワクチンを打たない人がいます。医療者を信用しておらず、性別や外見に言及されるのをおそれてワクチンを打ちに行かないのです。

私は「接種券には性別欄がないし、性別に丸をしなくても誰もなにも聞いてこなかったよ」とは言ったのですが、不信感の払拭には至っていないと思います。

ホルモン剤について不必要な質問をすること自体がトランスジェンダーの人々をワクチンから遠ざける理由になります。また、体調不良の際に病院で投薬内容を正確に申告することをためらわせる要因にもなるでしょう。

差別が人の健康を左右することを実感しました。

 

こんな感じです。だいぶ前から言いたい内容をメモしていたのですがいざ電話を手に取るとためらいました。

「苦情を言う」という行動について、本当は積極的にやりたいとは思うのですが、私の父は、「生協のすあまの切り方がサイズがまちまちだ」とかいうような苦情の電話をしょっちゅうしてる一種のクレーマーだったので、苦情電話なんて父みたいで嫌だなぁとか思ってしてこなかったのですが、今回の大杉さんのnoteを読んでみて、無駄な力が抜けました。リスペクトある良い苦情が言えた気がします。

 

性別違和の診断のガイドラインは超絶愚かなので、私は「男性らしい振る舞いが出来ていますか?」という愚かな問診を精神科医に繰り返されています。そういうときに思い浮かべるのが父の振る舞いなのがどうにも「いいえ絶対に男らしくなんて振る舞いません!」みたいな返答に結び付いてしまうので、試しに当面男性のロールモデルを大杉さんに設定しとくのも面白いかもしれません。アベノチンポ5年は、「どんどん苦情を言う」って抱負を書き初めしようかな。

 

性別も年号も滅べばいいのに

トランスジェンダー関連本のリスト(札幌市図書館にあるぶん大体全部)

書名

著者

出版者

出版年月

トランスジェンダー問題 議論は正義のために

ショーン・フェイ/著

明石書店

2022/09

イン・クィア・タイム アジアン・クィア作家短編集

イン・イーシェン/編

ころから

2022/08

歴史の中の多様な「性」 日本とアジア変幻するセクシュアリティ

三橋 順子/著

岩波書店

2022/07

LGBTQの家族形成支援 生殖補助医療・養子&里親による

二宮 周平/編

信山社

2022/06

笹森くんのスカート

神戸 遙真/著

講談社

2022/06

今とこれからがわかるはじめてのLGBT入門

清水 展人/著

主婦の友社

2022/05

医療者のためのLGBTQ講座

吉田 絵理子/総編集

南山堂

2022/05

LGBTQの働き方をケアする本

宮川 直己/著

自由国民社

2022/05

トランスジェンダーを生きる 語り合いから描く体験の「質感」

町田 奈緒士/著

ミネルヴァ書房

2022/03

「ちがい」がある子とその親の物語 3 レイプで生まれた子、犯罪者になった子、トランスジェンダーの場合

アンドリュー・ソロモン/著

海と月社

2022/02

みんなえがおになれますように ちがうってすてきなこと 

うい/作   早川 世詩男/絵   松中 権/監修

学研プラス

2022.9

ノンバイナリーがわかる本 heでもsheでもない、theyたちのこと

エリス・ヤング/著

明石書店

2021/12

トランス男性によるトランスジェンダー男性学

周司 あきら/著

大月書店

2021/12

エトセトラ VOL.6(2021FALL/WINTER) フェミマガジン 特集スポーツとジェンダー

 

エトセトラブックス

2021/11

男の子みたいな女の子じゃいけないの? トムボーイの過去、現在、未来

リサ・セリン・デイヴィス/著

原書房

2021/10

声をあげて、世界を変えよう! よりよい未来のためのU30の言葉

アドーラ・スヴィタク/著

DU BOOKS

2021/10

はじめての精神医学

村井 俊哉/著

筑摩書房

2021/10

子どもを育てられるなんて思わなかった LGBTQと「伝統的な家族」のこれから

古田 大輔/編

山川出版社

2021/09

子どもを育てられるなんて思わなかった LGBTQと「伝統的な家族」のこれから

古田 大輔/編

山川出版社

2021/09

性別解体新書 身体、ジェンダー、好きの多様性

佐倉 智美/著

現代書館

2021/09

ドラえもん探究ワールド衣服と制服のひみつ

藤子・F・不二雄/まんが

小学館

2021/08

みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT

遠藤 まめた/著

筑摩書房

2021/06

3人で親になってみた ママとパパ、ときどきゴンちゃん

杉山 文野/著

毎日新聞出版

2021/04

<体育会系女子>のポリティクス 身体・ジェンダーセクシュアリティ

井谷 聡子/著

関西大学出版部

2021/03

Tomboy The surprising history and future of girls who dare to be different

Lisa Selin Davis/著

Legacy Lit

2021/00

第三の性「X」への道 男でも女でもない、ノンバイナリーとして生きる

ジェマ・ヒッキー/著

明石書店

2020/12

社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本

井上 彼方/編

社会評論社

2020/12

元女子高生、パパになる

杉山 文野/著

文藝春秋

2020/11

ヒゲとナプキン

杉山 文野/原案

小学館

2020/10

LGBT専門医が教える心・体そして老後大全 性同一性障害診療の第一人者が回答!

針間 克己/監修

わかさ出版

2020/10

誰かの理想を生きられはしない とり残された者のためのトランスジェンダー

吉野 靫/著

青土社

2020/10

おやこで話すはじめてのLGBTs きみは世界でただひとり

鶴岡 そらやす/著

日本能率協会マネジメントセンター

2020/08

ミッドナイトスワン

内田 英治/著

文藝春秋

2020/07

性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち

伊藤 元輝/著

柏書房

2020/06

フェミニスト現象学入門 経験から「普通」を問い直す

稲原 美苗/編

カニシヤ出版

2020/06

歌姫(シャリース)の仮面を脱いだ僕(ジェイク)

ジェイク・ザイラス/著

柘植書房新社

2020/04

あとを継ぐひと

田中 兆子/著

光文社

2020/04

ハーフムーン街の殺人

アレックス・リーヴ/著

小学館

2020/03

ひとりひとりの「性」を大切にする社会へ

遠藤 まめた/著

新日本出版社

2020/01

LGBTをめぐる法と社会

谷口 洋幸/編著

日本加除出版

2019/10

パパは女子高生だった 女の子だったパパが最高裁で逆転勝訴してつかんだ家族のカタチ

前田 良/著

明石書店

2019/10

赤松 利市/著

徳間書店

2019/09

身体を引き受ける トランスジェンダーと物質性のレトリック

ゲイル・サラモン/著

以文社

2019/09

性別違和・性別不合へ 性同一性障害から何が変わったか

針間 克己/著

緑風出版

2019/09

夢をあきらめないで 68歳で性別適合手術

三土 明笑/著

現代書館

2019/09

トランスジェンダーの私がボクサーになるまで

トーマス・ページ・マクビー/著

毎日新聞出版

2019/08

30歳で「性別が、ない!」と判明した俺がアラフィフになってわかったこと。

新井 祥/著

ぶんか社

2019/07

クィアと法 性規範の解放/開放のために

綾部 六郎/編著

日本評論社

2019/06

Xジェンダーという生き方 男でも女でもない人の恋愛事情

石崎 沙織/著

総合教育出版

2019/05

DIVE TO BANGLADESH

梶井 照陰/著

リトルモア

2019/05

12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと

モカ/著

光文社

2019/04

ナタンと呼んで 少女の身体で生まれた少年

カトリーヌ・カストロ/原作

花伝社

2019/04

虹色ジャーニー 女と男と、時々ハーフ

浅沼 智也/著

文芸社

2019/04

ペニスカッター 性同一性障害を救った医師の物語

和田 耕治/著

方丈社

2019/02

The other boy

M. G. Hennessey/著

HarperCollins Children’s Books

2019/00

ケーススタディ職場のLGBT 場面で学ぶ正しい理解と適切な対応

寺原 真希子/編集代表

ぎょうせい

2018/11

さよならちんちんウェルカムまんまん OLになりたくて性別適合手術しました

上川 依子/原作

実業之日本社

2018/11

変化球男子

M.G.ヘネシー/作

鈴木出版

2018/10

国際化の時代に生きるためのQ&A 2 ジェンダーってなんのこと?

 

創元社

2018/09

ぼくがスカートをはく日

エイミ・ポロンスキー/著

学研プラス

2018/08

性とジェンダー 個と社会をめぐるサイエンス

日経サイエンス編集部/編

日経サイエンス

2018/08

オレは絶対にワタシじゃない トランスジェンダー逆襲の記

遠藤 まめた/著

はるか書房

2018/07

総務部長はトランスジェンダー 父として、女として

岡部 鈴/著

文藝春秋

2018/06

性の多様性ってなんだろう?

渡辺 大輔/著

平凡社

2018/06

LGBTと女子大学 誰もが自分らしく輝ける大学を目指して

日本女子大学人間社会学LGBT研究会/編

学文社

2018/04

子どもの性同一性障害に向き合う 成長を見守り支えるための本

西野 明樹/著

日東書院本社

2018/04

トランスジェンダーと職場環境ハンドブック 誰もが働きやすい職場づくり

東 優子/著

日本能率協会マネジメントセンター

2018/04

性転換から知る保健体育 元男が男女の違いについて語る件

小西 真冬/著

KADOKAWA

2018/03

トランスジェンダー現代社会 多様化する性とあいまいな自己像をもつ人たちの生活世界

石井 由香理/著

明石書店

2018/03

「ふつう」ってなんだ? LGBTについて知る本

ReBit/監修

学研プラス

2018/02

カミングアウトそれから 「性同一性障害」つれづれなるままに

深田 羊皇/著

クレイン

2017/12

江戸の異性装者(クロスドレッサー)たち セクシュアルマイノリティの理解のために

長島 淳子/著

勉誠出版

2017/11

江戸の異性装者(クロスドレッサー)たち セクシュアルマイノリティの理解のために

長島 淳子/著

勉誠出版

2017/11

セクシュアリティと法 身体・社会・言説との交錯

谷口 洋幸/編

法律文化社

2017/10

パンツ・プロジェクト

キャット・クラーク/著

あすなろ書房

2017/10

よくわかるLGBT 多様な「性」を理解しよう

藤井 ひろみ/監修

PHP研究所

2017/09

スカートはかなきゃダメですか? ジャージで学校

名取 寛人/著

理論社

2017/08

封じ込められた子ども、その心を聴く 性同一性障害の生徒に向き合う

中塚 幹也/著

ふくろう出版

2017/08

マンガレインボーKids 知ってる?LGBTの友だち

手丸 かのこ/マンガ

子どもの未来社

2017/07

性別に違和感がある子どもたち トランスジェンダー・SOGI・性の多様性

康 純/編著

合同出版

2017/06

トランスジェンダーの心理学 多様な性同一性の発達メカニズムと形成

佐々木 掌子/著

晃洋書房

2017/04

わたしらしく、LGBTQ 4 心とからだを大切にしよう

ロバート・ロディ/著

大月書店

2017/03

わたしらしく、LGBTQ 3 トランスジェンダーってなに?

ロバート・ロディ/著

大月書店

2017/03

わたしらしく、LGBTQ 2 家族や周囲にどう伝える?

ロバート・ロディ/著

大月書店

2017/02

レッド あかくてあおいクレヨンのはなし

マイケル・ホール/作

子どもの未来社

2017/01

わたしらしく、LGBTQ 1 多様な性のありかたを知ろう

ロバート・ロディ/著

大月書店

2017/01

セクシュアルマイノリティってなに?

日高 庸晴/監修

少年写真新聞社

2017/01

彼らが本気で編むときは、

荻上 直子/原作

パルコエンタテインメント事業部

2017/01

セクシュアル・マイノリティの法律相談 LGBTを含む多様な性的指向性自認の法的問題

東京弁護士会性の平等に関する委員会セクシュアル・マイノリティプロジェクトチーム/編著

ぎょうせい

2016/12

ジョージと秘密のメリッサ

アレックス・ジーノ/作

偕成社

2016/12

くまのトーマスはおんなのこ ジェンダーとゆうじょうについてのやさしいおはなし

ジェシカ・ウォルトン/さく

ポット出版プラス

2016/12

Xジェンダーって何? 日本における多様な性のあり方

Label X/編著

緑風出版

2016/10

走る五人の医師 性同一性障害専門医たちの十年

関西GIDネットワーク/著

パレード

2016/10

LGBTなんでも聞いてみよう 中・高生が知りたいホントのところ

QWRC/著

子どもの未来社

2016/08

空はいまぼくらふたりを中心に

村上 しいこ/著

講談社

2016/08

先生と親のためのLGBTガイド もしあなたがカミングアウトされたなら

遠藤 まめた/著

合同出版

2016/07

「性別が、ない!」人たちの保健体育

新井 祥/著

ぶんか社

2016/03

LGBTQを知っていますか? “みんなと違う”は“ヘン”じゃない

日高 庸晴/監著

少年写真新聞社

2015/12

酔いどれ女の流れ旅 カルーセル麻紀“自叙伝”

カルーセル麻紀/著

財界さっぽろ

2015/11

George

Alex Gino/著

Scholastic Press

2015/09

王さまと王さま

リンダ・ハーン/絵と文

ポット出版

2015/08

きいてみよう障がいってなに? 2 どんな学校になったらいいと思う?

石川 憲彦/監修

ポプラ社

2015/04

きいてみよう障がいってなに? 5 みんなが暮らしやすい社会って?

石川 憲彦/監修

ポプラ社

2015/04

きいてみよう障がいってなに? 3 学校で困っていることある?

石川 憲彦/監修

ポプラ社

2015/04

カミングアウト トランスジェンダーの夫との離婚狂想曲

松本 美子/著

幻冬舎メディアコンサルティング

2015/03

はなそうよ!恋とエッチ みつけよう!からだときもち

すぎむら なおみ/著

生活書院

2014/12

カラフルなぼくら 6人のティーンが語る、LGBTの心と体の遍歴

スーザン・クークリン/著

ポプラ社

2014/07

女の子、はじめます。 ココロとカラダの成長ログ

北村 邦夫/著・監修

小学館

2014/01

トロピカル性転換ツアー

能町 みね子/絵と文

文藝春秋

2013/12

男に生まれて、女になって、結婚もできました。

吉井 奈々/著

日本文芸社

2013/12

トロピカル性転換ツアー

能町 みね子/絵と文

文藝春秋

2013/12

からだノート 中学生の相談箱

徳永 桂子/著

大月書店

2013/06

性同一性障害と戸籍 性別変更と特例法を考える

針間 克己/著

緑風出版

2013/03

境界を生きる 性と生のはざまで

毎日新聞「境界を生きる」取材班/著

毎日新聞社

2013/02

性同一性障害 3.11を超えて

谷合 規子/著

論創社

2012/09

ユニバーサルデザイン 第2期1 つながる・ささえあう社会へ 多様性を大切にするユニバーサルデザイン

 

あかね書房

2012/04

14歳からの精神医学 心の病気ってなんだろう

宮田 雄吾/著

日本評論社

2011/10

性同一性障害って何? 一人一人の性のありようを大切にするために

野宮 亜紀/著

緑風出版

2011/03

ゲイのボクから伝えたい「好き」の?がわかる本 みんなが知らないLGBT

石川 大我/著

太郎次郎社エディタス

2011/01

13歳までに伝えたい女の子の心と体のこと 大切なお嬢さんのために

やまがた てるえ/著

かんき出版

2010/11

LGBT BOOK NHKハートをつなごう

NHKハートをつなごう」制作班/監修

太田出版

2010/08

性同一性障害 児童期・青年期の問題と理解

ケネス・J.ズッカー/[著]

みすず書房

2010/06

ダブルハッピネス

杉山 文野/[著]

講談社

2009/12

オカマだけどOLやってます。

能町 みね子/著

文藝春秋

2009/08

小・中学生の「心の病気」事典 気もちがラクになる!

市川 宏伸/監修

PHP研究所

2009/04

感動ストーリーズ 1 壁を乗り越えて

 

学研

2009/02

性同一性障害 ジェンダー・医療・特例法

石田 仁/編

御茶の水書房

2008/09

女装と日本人

三橋 順子/著

講談社

2008/09

たのしいせいてんかんツアー

能町 みね子/絵と文

竹書房

2008/09

男になりタイ! 私の彼氏は元オンナ

竹内 佐千子/著

メディアファクトリー

2008/08

14歳のカミングアウト 性同一性障害を乗り越えて

三峰 有生/著

ポプラ社

2008/06

わたし、男子校出身です。

椿姫 彩菜/著

ポプラ社

2008/06

知っ得恋愛のキーワード集

國文學編集部/編

學燈社

2008/03

性転換

古川 智映子/著

角川学芸出版

2008/02

オカマだけどOLやってます。 ナチュラル篇

能町 みね子/絵と文

竹書房

2007/12

性同一性障害と戸籍 性別変更と特例法を考える

針間 克己/著

緑風出版

2007/12

『性別が、ない!』ということ。

新井 祥/著

ぶんか社

2007/11

隠されたジェンダー

ケイト・ボーンスタイン/著

新水社

2007/09

アスファルトの帰り道

川村 由紀/著

ヴィレッジブックス

2007/08

性・自分・家族

北村 邦夫/監修

金の星社

2007/03

大切にしよう!体と心 4 考えよう!性・成長とホルモン

竹内 修二/監修

教育画劇

2007/03

変えてゆく勇気 「性同一性障害」の私から

上川 あや/著

岩波書店

2007/02

女に生まれて男で生きて 女子サッカー元日本代表エースストライカーと性同一性障害

水間 百合子/著

河出書房新社

2006/10

オカマだけどOLやってます。

能町 みね子/絵と文

竹書房

2006/10

トランスジェンダーとして生きる

真木 柾鷹/編著

同時代社

2006/06

ダブルハッピネス

杉山 文野/著

講談社

2006/05

セクシュアルマイノリティ 同性愛、性同一性障害インターセックスの当事者が語る人間の多様な性

セクシュアルマイノリティ教職員ネットワーク/編著

明石書店

2006/03

戦後日本女装・同性愛研究

矢島 正見/編著

中央大学出版部

2006/03

ぽっかり穴のあいた胸で考えた わたしの乳がん体験記

高橋 フミコ/著

バジリコ

2006/03

トランスジェンダーフェミニズム

田中 玲/著

インパクト出版会

2006/03

オトコが女になるとき 性転換の幸せ

廣畑 涙嘉/著

講談社

2006/01

女は一日にしてならず

カルーセル麻紀/著

幻冬舎

2005/11

セックス・チェンジズ トランスジェンダー政治学

パトリック・カリフィア/ほか著

作品社

2005/07

国際離婚

松尾 寿子/著

集英社

2005/06

変な子と呼ばれて ミッシェル・近藤の人生

吉永 みち子/著

筑摩書房

2005/06

ジェンダーで学ぶ文化人類学

田中 雅一/編

世界思想社

2005/01

明るいトランスジェンダー生活

佐倉 智美/著

トランスビュー

2004/12

性同一性障害30人のカミングアウト I recognize myself as what I am!

相馬 佐江子/編著

双葉社

2004/07

女子高生になれなかった少年 ある性同一性障害者の青春時代

佐倉 智美/著

青弓社

2003/12

性同一性障害って何? 一人一人の性のありようを大切にするために

野宮 亜紀/[ほか]著

緑風出版

2003/09

男の戸籍をください

虎井 まさ衛/著

毎日新聞社

2003/07

語り継ぐトランスジェンダー性同一性障害の現在・過去・未来

虎井 まさ衛/編著

十月舎

2003/07

セクシュアリティの多様性を踏みにじる暴力と虐待 差別と沈黙のはざまで

アムネスティ・インターナショナル/編

現代人文社

2003/07

トランスジェンダリズム宣言 性別の自己決定権と多様な性の肯定

米沢 泉美/編著

社会批評社

2003/05

セクシュアルマイノリティ 同性愛、性同一性障害インターセックスの当事者が語る人間の多様な性

セクシュアルマイノリティ教職員ネットワーク/編著

明石書店

2003/03

トランスジェンダーの時代 性同一性障害の現在

虎井 まさ衛/著

十月舎

2003/03

私を脱がせて

カルーセル麻紀/著

ぶんか社

2002/12

スカートをはいた少年 こうして私はボクになった

安藤 大将/著

ブックマン社

2002/12

多様な「性」がわかる本 性同一性障害・ゲイ・レズビアン

伊藤 悟/編著

高文研

2002/09

女が少年だったころ ある性同一性障害者の少年時代

佐倉 智美/著

作品社

2002/06

私、わたし ろう者で性同一性障害27歳の心の葛藤

緒方 英秋/著

講談社

2002/01

性同一性障害と法律 論説・資料・Q&A

石原 明/編著

晃洋書房

2001/05

トランスジェンダーの時代 性同一性障害の現在

虎井 まさ衛/著

十月舎

2000/11

私はトランスジェンダー 二つの性の狭間で…ある現役高校教師の生き方

宮崎 留美子/著

ねおらいふ

2000/11

Search〜きみがいた GID(性同一性障害)ふたりの結婚

平安名 祐生/著

徳間書店

2000/10

脳が決める男と女 性の起源とジェンダーアイデンティティ

サイモン・ルベイ/著

文光堂

2000/06

性の境界 からだの性とこころの性

山内 俊雄/著

岩波書店

2000/06

性同一性障害 性転換の朝

吉永 みち子/著

集英社

2000/02

ヒジュラ 男でも女でもなく

セレナ・ナンダ/著

青土社

1999/12

性転換手術は許されるのか 性同一性障害と性のあり方

山内 俊雄/著

明石書店

1999/09

性同一性障害はオモシロイ 性別って変えられるんだョ

佐倉 智美/著

現代書館

1999/07

わたしが最後にドレスを着たとき 性同一性障害と診断されたある「少女」の回想

ダフネ・ショリンスキー/著

大和書房

1999/02

「心の性」で生きる

八岩 まどか/著

朝日ソノラマ

1998/10

偽りの肉体 性転換のすべて

バーバラ・カンプラート/編著

信山社出版

1998/06

図解人体改造マニュアル タトゥー、ボディピアスから整形、性転換手術まで

改造人間プロジェクト/著

同文書院

1998/01

ある性転換者の記録

虎井 まさ衛/著

青弓社

1997/11

性の誤解 性転換-男の体を持った女

河添 恵子/著

恒友出版

1997/08

クワルテット 第1楽章性転換手術

なだ いなだ/著

筑摩書房

1997/04

女から男になったワタシ

虎井 まさ衛/著

青弓社

1996/04

ヒジュラ インド第三の性

石川 武志/著

青弓社

1995/10

ヒジュラに会う 知られざるインド・半陰陽の社会

大谷 幸三/著

筑摩書房

1995/04

男でもなく女でもなく 新時代のアンドロジナスたちへ

蔦森 樹/著

勁草書房

1993/10

トランス・ジェンダーの文化 異世界へ越境する知

渡辺 恒夫/著

勁草書房

1989/05

現代のエスプリ L’esprit d’aujourd’hui 1990年 8月号 通巻277号

 

至文堂

 

札幌医大図書館所蔵の性同一性障害関連本がとても古い

札幌医科大学の図書館でGID性同一性障害)関連本の所蔵調査?をしてみました。

以下の本が所蔵されています。

 

図書館の本棚の写真。並んでいる本は、 ズッカー「性同一性障害」、山内俊雄「性の境界」、「性同一性障害の基礎と臨床」、「ある性転換者の記録」、「ニューセックスセラピー」、「偽りの肉体」、「性同一性障害と法律」、「性を再考する」、「ブレンダと呼ばれた少年」、「子どもの性的虐待」

札幌医大図書館の本棚

 

性同一性障害 : 児童期・青年期の問題と理解
著者名     ケネス・J・ズッカー, スーザン・J・ブラッドレー [著]/鈴木國文 [ほか] 共訳
出版     みすず書房 2010/6  ISBN     9784622075325   8360円

 

子宮奇形・腟欠損・外陰異常・性別適合の手術 : 病態理解と術式まるごとマスター
OGS NOW ; 7
著者名     竹田省担当編集委員/平松祐司 [ほか] 編集委員
出版     メジカルビュー社 2011/8  ISBN     9784758312066   13200円

 

食事と性 脳とこころのプライマリケア ; 7
著者名     中山和彦編   出版     シナジー 2011/7   ISBN     9784916166319   27400円

 

性同一性障害の基礎と臨床, 改訂版
著者名     山内俊雄編著   出版     新興医学出版社 2004/10.  ISBN     4880024732.   4300円

 

性同一性障害と法律 : 論説・資料・Q&A
著者名     石原明, 大島俊之編著/池田純一 [ほか] 執筆.  出版     晃洋書房 2001/5
ISBN     4771012288

 

性の境界 : からだの性とこころの性
岩波科学ライブラリー ; 74
著者名     山内俊雄著.  出版     岩波書店 2000/6.  ISBN     4000065742   1000円

 

性転換手術は許されるのか : 性同一性障害と性のあり方
著者名     山内俊雄著.  出版     明石書店 1999/9
ISBN     475031210X.  所蔵     神経精神医学 WM611||Y46 講座所管

 

ジェンダーで学ぶ文化人類学
著者名     田中雅一, 中谷文美編.  出版     世界思想社 2005/1
ISBN     4790710963.  1900円

(※第三の性、ヒジュラ、ベルダーシュ、ハンニースに言及あり)

 

偽りの肉体 : 性転換のすべて
著者名     バーバラ・カンプラート, ワルトラウト・シッフェルス編著/近藤聡子訳
出版     信山社出版 1998/6.  ISBN     4797215488   2600円

(原著は1991年と古いが、内容は結構面白い)

 

ある性転換者の記録
著者名     虎井まさ衛, 宇佐美恵子著
出版     青弓社 1997/11.  ISBN     4787231464

 

性は変えられるか : 性転換の医学的解明
現代性医学シリーズ
著者名     穴田秀男著

出版     メディカルトリビューン日本支社 Sexual Medicine編集室 1976/11

 

性を再考する : 性の多様性概論
著者名     橋本秀雄, 花立都世司, 島津威雄編著
出版     青弓社 2003/5.  ISBN     4787232142.  1600円

(※インターセックストランスジェンダーについて。講義録っぽい)

 

ブレンダと呼ばれた少年 : 性が歪められた時、何が起きたのか
著者名     ジョン・コラピント著/村井智之訳
出版     扶桑社 2005/5 ISBN     4594049583

(※マネーの双子の症例)

 

ジェンダーアイデンティティ : 社会心理学的測定と応用
著者名     下條英子著
出版     風間書房 1997/3 ISBN     4759910212  11000円

(※トランスジェンダーについての記述があるかは不明)

 

 

いろいろ探したけど、多分上記で全部だと思います。さすが医大、市立図書館にはないような高価な本がありますね。

最も高価な本は27400円「食事と性 脳とこころのプライマリケア ; 7」で、精神医学のシリーズの7巻で、摂食障害性同一性障害・女性のライフサイクルに応じた精神医学的問題を扱っています。

「子宮奇形・腟欠損・外陰異常・性別適合の手術 : 病態理解と術式まるごとマスターOGS NOW ; 7」は13200円。

 

最も古い本は1976年「性は変えられるか : 性転換の医学的解明」。

ブルーボーイ事件は1964年で、69年に有罪判決を受けているので、76年にはどのように考えられていたのかちょっと興味がわきます。画像を検索したら古書という感じの見た目でした。埼玉医大GID医療の倫理性を検討しはじめたとき、日本語で読める資料はどのくらいあったのでしょう。

著者の穴田秀男氏は、他の著作から察するに医療と法律の問題を研究していた人のようです。ご存命なのでしょうか。

 

もっとも新しい本は2011年「子宮奇形・腟欠損・外陰異常・性別適合の手術 : 病態理解と術式まるごとマスターOGS NOW ; 7」です。実際の手術の内容が写真付きで解説してあり興味深いです。GIDクリニックを受診し診断をとるまでの長いステップの中では性別適合手術の術式などの説明や手術の写真を見せてもらえません。手術を望むかどうかを検討する上で必要な情報だと思うのですが。北大にも所蔵されているので、相互貸借で借りることができました。

 

最も新しい本が2011年で、その後新しい本が10年以上入っておらず、蔵書のほとんどが1997〜2005年というのは興味深いです。

著者の山内俊雄率も高く、一般向けに書かれた2冊と医学書が一冊あります。

「性転換手術は許されるのか : 性同一性障害と性のあり方」はブルーボーイ事件後、違法だとみなされていた”性転換手術” を埼玉医科大が公的に治療の対象として認めるまでの経緯を解説した良書です。山内俊雄は精神科医で倫理委員会の委員長でした。

私が札医大の図書館の棚を見て一番先に目がとまったのは、もう一冊の「性の境界 : からだの性とこころの性」です。

「性の境界 からだの性とこころの性」表紙

 

冒頭引用します。

はじめに

「性転換」という言葉を聞くとあなたはどんな反応を示すのでしょうか。「わあ、気持ち悪い」というのでしょうか。それとも「エッチ!」といって、笑いだすのでしょうか。もしそうだとしたら、あなたは、あんがいお若い方かもしれません。

1999年の明石書店の本があんなにまともだったのに、同じ著者による2000年の岩波書店の本は興味本位で差別的な態度です。内容も有性生殖と無性生殖がどうとか、性分化や性分化疾患の解説にかなりのページ数が費やされており、脳の性差にも言及があります。性同一性障害についての本というよりは、「性とは何か」という、精神医学の専門家が書くには壮大すぎるテーマに取り組んでいます。2022年の私から見ると、これは無責任な思考実験のように感じます。(しかし今年のGID学会でもカタツムリがどうとかいう話題が出ています)

病因論については、ズッカーの「性同一性障害:児童期・青年期の問題と理解」にも同様の記述があり、あまり現在も大きな進歩はないように思います。(2022年において、病因論に強く関心を持つ人はむしろ「やばいやつ・・・」という印象をもちます)

性差別的えせ医学っぽいデータも。脳の働きにあたえる性ホルモンの影響という表があり、FTMにアンドロゲン投与すると攻撃性性衝動空間認知能力が↑、言語の流暢性が↓、MTFエストロゲン投与すると逆に攻撃性性衝動空間認知能力が↓、言語流暢性が↑というデータなのですが、性衝動はわかるけどホルモンで言語流暢性は変わらないと思います。(表3 脳の働きにあたえる性ホルモンの影響 p.93)

この本、札医大にはもう要らないのではないでしょうか。歴史的価値はあるかも知れませんが、こんな本はとっとと書庫にぶち込んで新しい本を入れるべきです。

 

さらに問題のある本としては、「性同一性障害 : 児童期・青年期の問題と理解」も挙げられます。著者ケネス・J・ズッカーには、児童・青年のトランスに対してコンヴァージョンセラピー(矯正医療)を行ったとの批判があり、この本にもその「行動療法」の記載があります。その際治療者の性別はどちらがいいかとか、くそくだらない検討もされています。

 

法律の面から性同一性障害を論じた「性同一性障害と法律 : 論説・資料・Q&A」は非常に面白い本ですが、出たのは2001年で、性同一性障害特例法の成立前です。

特例法以前に、性別変更の法制度がどうあるべきかを検討しており、例えば住民票や健康保険証の変更を可能にする案など、今でも楽しく読めます。

 

札幌医大GIDクリニックを設置したのは2003年ですから、導入初期以降はあまり関心が広がらなかったことがうかがえます。

 

ちなみに北海道大学図書館で「性同一性障害」(not解離性)で検索してみたら81件ヒットしました。

医療者は本をわりと個人的に買ってしまいがちだし、一般書は札幌市立図書館に潤沢に揃っているのであえて医大図書館に入れる必要はないかもしれないけど、札幌医大のこのラインナップは流石に、…怖い。

 

医療者に読んでほしいトランスジェンダー本としては、

ショーン・フェイ「トランスジェンダー問題 議論は正義のために」

吉野靫「誰かの理想を生きられはしない」

吉田絵理子「医療者のためのLGBTQ講座」

伊藤元輝「性転師」

和田耕治「ペニスカッター」

針間克己「性別違和・性別不合へ」

佐々木掌子「トランスジェンダーの心理学」

町田奈緒士「トランスジェンダーを生きる:語り合いから描く体験の質感」

エリス・ヤング「ノンバイナリーがわかる本」

康純「性別に違和感がある子どもたち」

谷口洋幸「LGBTをめぐる法と社会」

…あたりがあってほしいと思いました。(めっちゃ、個人的な好みですけど)