しょんべんおばけ日記

40代会社員 Agender Aromantic

北洋銀行が住宅ローンの対象をLGBTと事実婚ときょうだいにも広げたのすげえな!

 このニュース、とても嬉しい。

 私の地元の銀行、北洋銀行事実婚・同性パートナー・兄弟姉妹を対象に住宅ローンの取り扱いを始めた。法律婚夫婦同様に二人の収入を合算してローン審査を受けることができる。

 

www.hokkaido-np.co.jp

 

 

北洋銀行プレスリリース

道内金融機関で初めて事実婚・同性パートナー等の方々に対する住宅ローンの取扱いを開始します (PDF 249KB)

 

 

 だけど私は性格が悪いので真っ先に思ったのは「ちゃんと使える内容なんだろか?結局また富裕層ゲイ対応じゃないべか?」ということだった。

 

 パートナーと私はトランスジェンダーとノンバイナリー。数年前から、法的婚姻関係ではない二人でも利用できる住宅ローンを検討していた。

二人で収入合算をしてローン審査を受けることができれば、借入可能額を増やすことができる。住宅ローンでは一般に年収の6倍(5倍から7倍とも)まで借りることができると言われていて、例えば北海道の平均年収約400万円の6倍は2400万円。収入合算ができないと物件の選択肢がかなり限られてしまう。

それに私はモラハラ傾向がある。もし私が一人でローンを組むと、「ここは私の家だぞ、もんくがあるならでてけー」みたいなことになりかねない。対等で健全な関係を作るために、名義も借金も50%ずつにしたい。そしてなるべく税金を払いたくなかった。

 

 

 

 北洋銀行ニュースリリースによると条件は、

事実婚の配偶者 :「未届の妻」「未届の夫」や「妻(未届)」「夫(未届)」と記載のある住民票

兄弟姉妹:傍系血族の親族であることが確認できる戸籍謄本、住民票

同性パートナー :自治体発行のパートナーシップ制度証明書、または合意契約公正証書と任意後見契約公正証書

 

法律婚夫婦と同様に、「連帯債務契約や担保提供者になれる」らしい。何度読んでもこういう単語の意味が私には覚えられない。

 

LGBTの場合

自治体のLGBTパートナーシップ制度だけで良いというのはかなりハードルが低い。

札幌市の場合、住民票と戸籍謄本を取る費用だけなので二人で2000円弱。平日に二人で市役所の男女共同参画課へ行き、宣誓してサインするだけでいい。トランスジェンダーの利用を想定して戸籍上異性でも利用可能。札幌市の場合、同居の条件はないのでこれから同居するふうふも利用可能。

制度のない地域に暮らしている場合は公正証書を2種類作成することになる。

公正証書の手数料は一律に決められているらしく、費用は合わせて7万円くらい。公証人役場に行きさえすれば、日本公証人連合会が作成した文例があり、法律の専門家から内容の説明を受けられる。知識がなくとも決して難しくはない。弁護士や行政書士に依頼する必要はない。(例えば「LGBT 公正証書 費用」などで検索すると、作成費用だけで20万円以上を提示している法律事務所がヒットすることがある。ちょっとこれは良心的とは思えない)身分証明書と印鑑、印鑑登録証明書、そして7万円さえ用意すれば誰でも作れる。

 ちなみに問い合わせてみたのだが、トランスジェンダーの人で問題になることのある団信(団体信用生命保険)は、北洋銀行では3箇所の取り扱いがあるそうで、それぞれ審査基準が違い、どれかは通る可能性がある。通常は本審査の時に団信も審査を受けるのだが、事前審査のときに行うこともできるので、心配であれば先に出してみるほうが良さそう。

 

事実婚の場合(性的マイノリティでも戸籍上異性の場合は事実婚扱いでも可能だろう)

「妻(未届)」「夫(未届)」の住民票。

・・・一見、費用は一通500円以内だし、すごい楽ちんに見えるのだがちょっと難点がある。私たちのように「今は別々に暮らしていて二人で暮らす家が欲しい」という場合には利用できない。事実婚の場合住民票以外の選択肢はなく、すでに一緒に暮らしているふうふしか想定されていない。契約のためにあらかじめ住民票だけどちらかの家に移しておいたとしても、ローン契約では今の家賃がいくらでそれを何年払ったかという情報も審査に影響する。不利になる場合があるかもしれない。そもそも役所に実態と違った届出をするのはあまり良いことではない。

それから、住民票を一つにすることで職場の手当面でデメリットが出る可能性がある。ふつう、住宅手当や燃料手当(北海道は冬季に暖房代を支給される会社が多い)は住民票の婚姻区分と世帯主非世帯主に紐づいていて、私の職場だと、今私は未婚世帯主として住宅手当と燃料手当を一年で計18万円くらい支給されているが、もし住民票で未届配偶者になり未婚非世帯主の区分になった場合、住宅手当はゼロ、燃料手当はひと冬3万円ほど。既婚世帯主になれるわけではなく、婚姻の優遇は受けられないのに手当は大きく減るかも。

 

 

 

 こうしてみると私には、事実婚LGBTパートナーの条件が区別されている意味合いがわからなくなった。

 みずほ銀行で相談していたときに、事実婚へは対応しているのか質問してみたのだが「していない」との返答だった。これはおかしなことのように思う。社会保険や犯罪被害など、事実婚の方が婚姻に準じた対応を受ける場面はすでに他にもあり、同性カップルも徐々にその権利を認められるニュースも目にするようになってきた。このデコボコの意味が私にはわからない。

 

 いつか区役所に質問してみたいのだが、住民票に未届妻・夫の記載が可能なのは異性カップルだけなのだろうか?同性カップルが未届妻妻、未届夫夫と届けたり、トランスジェンダーが戸籍上の性別に関わらず自認の性に応じて「未届妻」「未届夫」と届けたり、「未届配偶者」などの性別の限定のない表記をすることはできないのだろうか。

 

 

 

 

 私たちは家を買うためにあれこれ調べたり、不動産屋さんやsuumoカウンター、ARUHI、銀行などに相談したり事前審査を出したりしていた。

複数の銀行が「LGBT対応」を掲げているが、実際に検討してみた感想としてはトランスジェンダーやあまり裕福ではない人にとってあまり使い勝手が良くない。

私たちが検討した銀行は、楽天銀行住信SBIネット銀行ソニー銀行みずほ銀行

ちょっと愚痴っぽくなるけどそれぞれ感想をメモしておく。

LGBT対応と言いながら単なる富裕層ゲイ対応にすぎないのでは?

私は収入が多くないからこそ、家を買いたいのに。

 

 

楽天銀行

 利用条件が狭すぎる。自治体パートナー証明も公正証書も不要なのは良いのだが、suumoカウンターから新築マンションを買うとき、または三好不動産でしか使えない。三好不動産…検索してみたら九州にあるようだ。新築マンションは高い。

楽天銀行の一般の住宅ローン商品を利用できるわけではなく、それとは別にLGBT向けのプランが設定されている点もあまり好感が持てない。そして返済シュミレーションをしてみたら他行と比べて利子が高く、総支払額で数百万円の差がついた。比較条件は記録にないのだが。

 

住信SBIネット銀行

 申し込み書類の性別欄は自認の性別に応じて記入することができて、その点はよかったが、ノンバイナリーとしては夫でも妻でもないんだけどなというモヤモヤは残った。

病歴に性同一性障害と書いたら団信が通らなかった。手術予定があるなどGIDで生命保険が通らないケースはあるかもしれないが、もしも診断を取っただけとか、ホルモン剤を使用しているだけでも審査が通らないのだとしたら、LGBT対応を名乗るべきではない。

全ての生命保険会社に言いたいのだが、性同一性障害(性別不合・性別違和)の審査基準について、ある程度情報開示すべきと思う。

 

ソニー銀行

 二種類の公正証書が必要。

ただしLGBTに限らず、申し込める人は年収400万以上、対象物件は築30年以下だけという条件があり、私たちがそのとき検討していたのは築40年フルリノベ物件だった。

ちなみに…北海道の平均年収はおよそ400万。しかもソニー銀行には収入合算方式の取り扱いがないようなので、これってふうふでペアローンを組むなら二人とも400万を超えている必要があるってこと??ええぃ金持ちめ!!

北海道の女性の平均年収は360万円ほどなので、裕福なゲイしか使えないではないかと悪態をつきたくなる。以前ソニーさんにファイナンシャルプランナーさんの講座にお誘いいただいたことがあり、大変勉強になったのだが、どうしても…実際自分が使えないとがっかりしてしまい失礼な態度をとりました。申し訳ない。

 自動車保険は確か家族の条件が同居一年以上で、保険商品の内容も良かったのでソニー自動車保険に契約を乗り換えています。

 

みずほ銀行

 もっとも初期からLGBTへの対応を開始した銀行と記憶している。

夫婦の定義に同性パートナーを含め、その条件として2種類の公正証書を求める方式。私たちは内覧するたびに不動産屋さんに初めから「みずほ銀行で」と希望を伝えていたのだが、なぜかしぶられがちで、あちこちの銀行を検討したのだが、何か不動産屋さんとみずほ銀行の間には確執でもあるのだろうか。

ちゃんと使える内容。団信も通る。社会状況的に外出を避けたかったこととパートナーと休みが合いにくかったのでネットで手続きするサービスを利用した。色々相談したければ店舗を訪ねた方が良いように思う。こちらが手続き系苦手だったり知識がないこともあり「いっそこれは店舗で相談したほうが話早いな」と思うシーンもあり、結局契約には時間がかかったが、多少費用は節約になったし満足している。適用利率も良かった。

 でも、口座開設アプリと通帳アプリが動かないんだけど。

 

 

 

・ARUHI住宅ローン 

 住宅ローンがパートナーと二人で契約できるかどうかは物件選びの予算を決める上で重要で、あらかじめそこは見通しをつけたかった。理想の物件が見つかってから契約までの間に手間取るのも困る。不動産屋さんに相談してみたら、「希望の予算の物件を試しに事前審査に出してみましょう」ということになり、ARUHI住宅ローンさんに相談することになった。大変ご親切に対応いただいた。ハンズの隣のビルにある。

 

・suumoカウンター

そもそも、新築にするか中古にするかマンションにするか戸建てにするか、それぞれ予算とメリット・デメリットがあり決めかねていた頃、一度相談に行った。

suumoカウンターでは「新築マンション」を勧められた。(まぁそもそもsuumoカウンターは新築物件をすすめるための場所なのだろうが)新築のマンションは高い。比較検討用に一軒内覧してみたが、立派だけど狭い。suumoから申し込むと楽天銀行の住宅ローンのLGBT用のプランが利用できるのだが、シュミレーションしてみたら、えらく利子が高く、総支払額で他行で普通に契約するよりも数百万円膨らんだ。ちょっとどういう条件を比較したのかは記録がないのだが、どこに頼むにしても周囲の多くの人が利用している銀行に比較用に審査に出そうと決意した出来事だった。

suumoさんはとても説明がわかりやすくて、予算の決め方や居住地など、いただいたアドバイスがその後実際に役立った。感謝しています。物件はいつもsuumoのアプリで探しました。

 

・R信金

これ書くか迷ってるし、ちょっとしたら消すかもしれないけど、とある地方の信金さん。そのとき相談していた不動産屋さんが熱意をもって推してきたのだが、こちらは「絶対対応していないしだめでしょ」と言っていたのだが不動産屋さんが「R信金に事情を相談したら、引き受けられるけど条件があってかくかくしかじか…」と例の公正証書2種類の内容を提示してきた。(あら本気だったの?)とおもって、一本は作成済ですと返答し、もう一本の準備を進めていたらR信金から電話が来て、「それでお二人は将来的に結婚するんですか?」と聞いてきた。意味がわからなかったので、よくよく聞いたのだが、話が噛み合わない。イラッときて「結婚するかどうかは国次第なので国に聞いてくれ」と言ったら「結婚意思なし(?)」として流れたもよう。聞く必要があるのかわからない情報を尋ねられたりと、終始謎対応だった。

 

 

 

〈おまけ〉

  

 ところでちょっとした不合理を感じているのだが・・おそらく異性カップルは一言「婚約しています」といえば、多くの銀行では何の書類も求めず、結婚している夫婦同等の契約ができて、しかもローン契約が実行されたあとに実際婚姻届を出さなくても、あるいは一度法律婚をしてすぐ離婚届を出しても、支払いが滞らない限り銀行は何も言わないし、契約が破棄されたりはしないんじゃないかと思うんですよね・・・

根拠はないのですが、これまで事実婚の異性カップルは「婚約しています」の一言で済ませてきたのかもしれないなぁと思ってしまっています。

 今回の北洋銀行の対応を見て思ったのですが、法律婚夫婦以外にも「家族になる」人たちはいて、この先多様な家族が同じ条件で同じサービスにアクセスできるようになっていくかもしれません。

国がいつまでも頑迷に、同性婚を認めず、選択的夫婦別姓制度を拒絶し、トランスジェンダーの性別変更に極端に厳しい要件を課し続けた結果、皮肉にも同性カップルよりももっと異性婚夫婦に「似ていない」関係性の人々が住まいを共有するニーズにも光が当たるようになっていけばいいな、と思っています。

いくつかの銀行が公正証書による法的根拠すら要求しないように、また北洋銀行が兄弟姉妹にも対象を広げたように、もしかしたら親子・婚姻といった戸籍の繋がりのみが特別な信用を得ていたことそのものが「意味ないよね」という方向に向かっていきつつあるのかもしれません。