しょんべんおばけ日記

40代会社員 Agender Aromantic

『パレードへようこそ』上映会感想

2023年5月28日開催の映画上映会の感想です。

書いたまま公開せず忘れていました。

 

 

ノマドさんの映画上映会、お寺シネマ@覚王寺で『パレードへようこそ』を鑑賞してきました。

ノマドさん、覚王寺さん、素敵な上映会をありがとうございました。

 

www.cetera.co.jp

 

実はこの映画気になりつつも、2014年の映画とちょっと古いこともあり観たことがなかったのですが、五輪反対デモで知り合った方からちょうどこの映画のお話を聞いたばかりだったので、とてもありがたいタイミングの上映会でした。本当に楽しかったです!

 

舞台は1984年の英国、ゲイとレズビアンが炭鉱労働者のストライキを支援する物語で、時代的にもテーマは重々しいものの、音楽やダンスが物語をぐっと軽やかに魅力的にしています。

強力にエンパワメントされる映画であるのに、上映会をみたあと、なぜかぐったり疲れてしまって、なんでだろう?と、もやもやしています。

ひとつには、友人と感想を語り合ったことで今の私たちが置かれている状況をどう受け止めていいのか悩ましい点にあるのかなと思う。

 

ノマドさんのトークで「これは普遍的な物語だ」「この作品はクィアパルムを受賞しており、是枝監督の『怪物』も同賞を獲った」と紹介されたのですが、上映会のあと友人と食事をしながら「モヤるよね」と話し合いました。『怪物』のプロモーションでは、是枝監督は「LGBTQに特化した話ではなく少年の内的葛藤の話と捉えた」とコメントしていて、このように「普遍的」という紹介をされることには、差別的な文脈を感じる、という指摘がネット上ではけっこう出ていて。シスヘテの映画のときには「普遍的」なんて言われない。「普遍的」というキャッチコピーは、同性愛を異常性愛として扱ってきたシスヘテ中心主義的な前提の上に留まっている。そういう意味ではこの映画に「普遍的」とか言われると(ハイハイ、シスヘテ目線シスヘテ目線)とか思う。

ノマドさんのトークでは、この映画が古く感じないことをむしろ残念に思うと語られていて、今ここで、生身の人間がはっきりとそう言ってくれることがとても嬉しかったです。

 

LGBTQの権利を後退させるために、特にトランスジェンダーの女性を標的としたヘイトスピーチが横行している2023年の日本。LGBTQコミュニティの当事者らや家族すらも関心を持ったり一緒に怒ったりしてくれず、むしろヘイトスピーチに影響を受けてしまっているような厳しい状況のなかでこの映画を観ると、映画の最初のほうで炭鉱労働者のひとがゲイバーで行った、遠くの人が自分たちに連帯を示してくれることへの感謝のスピーチにはちょっと感激した。

「普遍的」という言い回しは典型的には「これはLGBTの物語ではない。普遍的な愛の物語だ」みたいなコテコテのキャッチコピーとして多用されてきたが、今回の映画は恋愛や性愛の物語ではなく、労働運動との連帯の物語なので、私自身はそんなに違和感を感じてはいない。

いま私が疲れているのは、映画の中のレズビアンとゲイが眩しすぎることかもしれない。

なぜ私は2023年に、こんな鬱屈した不信感を持って生きなくてはならないのだろう。

80年代のLGBTの人々を取り巻く環境に比べて今は格段によくなっている。医学的にも社会的にも、考え方は大きく変わったし、情報はとても増えた。同性婚が法制化された国もずいぶん増えている。しかし、映画の中のレズビアンとゲイの人々のタフさ、明るさ、仲間への信頼は私にはない。

いま、LGBT法案をめぐり、差別的な前提のもと当事者らの実態や必要性と乖離した議論がなされている。三案出て紛糾しているこの時期に、「どうしてもこの映画を」と言って上映してくれる人々はとても良くわかっている人々だ。しかし、私はその良い人たちの言葉の端々に(でもやはり差別的なんじゃないか)という目線を向けずにいられない。

 

2019年以降、一部のフェミニストがトランス差別をやり出し、右派のみならず左派もそれにほいほい引っかかり、数多あるLGBTQ団体も必ずしも「トランス差別をやめろ」とは打ち出してくれない状況は、私にけっこう根深い不信感をもたらしている。LGBTQフレンドリーな人々や当事者ら、トランス医療に携わる医療者など、味方であるはずの人たちへの猜疑心から逃れられない。

この映画のLGの人々は、差別的な人々と交流し、しっかりとした人間関係を築いた。

なら私も、差別的なひとびとにも多様な人生経験があり、コミュニケーションをとれば関係性は変わりうることを信じることができないだろうか。

偏見も差別も暴力も身近にある社会で、仲間への強い信頼とプライドを持ちユーモアをもって強かに生きるこの映画の登場人物たちはなんだかとても眩しい。

 

そんなわけで、今日はとても疲れた…