名刺とタメ口
「なんか名刺はユウさんに渡されるよね」とうちのカミさんが言う。
私もそう思う。不動産屋とのやりとりはうちのパートナーがやっているので、内覧のときも名刺や書類はパートナーに対応してもらっていた。
だけど、業者に会うと、たいてい私に先に名刺が渡される。私が遠くにいるときでさえ。
外見上は、私もパートナーも女性に見える気がするのだが、車の運転をしてきた男性的な服装のほうを名刺を渡すべき相手と見なしたのだろうか。
どの業者にも、LGBTのパートナーですと言って物件探しをしているが、今のところさほど驚かれもしないし、不愉快な対応を受けたこともない。金さえ払えればきっと何でもいいだろう。ましてや、私はお金についてはとても真面目だ。
不動産屋には名刺を渡される一方で、銀行にはタメ口をきかれる。やはり、対面と電話の差だろうか。声は女性的だから。
「誰と住むのー?お母さん?」
と聞かれて驚いた。銀行からの電話で書類の確認をしていたのだが、ゼロがたくさんある額の契約をするかもしれない相手にこういう言葉遣いを常にしているとは思えない。相手はH銀行のローンの担当者。ネットで申し込んだものに不備があって連絡をくれたのだが…。
おそろしい。
私なんて、これよりはるかに丁寧な応対をしていても顧客から態度への苦情が来ることが時々ある。電話は、より女らしくにこやかに発声しないと苦情が来がちでとてもきらい。
「事実婚のパートナーと住みます」と返答したら、「うーん…余計なこと聞かれないように配偶者なしにしとくねー」と言うので、(余計なことって何?)って頭にきて、「パートナーシップ契約公正証書がありますが、おたくはそういう対応まだないんですか」と言ってみた。
…ないんだって。
ついでだからR信金のLGBTへの対応のことも書いておく。1年以上まえのことだが、不思議な対応だった。
不動産屋さんに、LGBTのパートナーシップを夫婦同等に扱えるM銀行で検討してると話したら強く勧められたR信金、さすがに無理だろう…と半信半疑で問い合わせたのだが、親切な対応をされて、「パートナーシップ契約公正証書があれば可能」とのことだったので、申込みの書類を送った。
数日して違う担当者から電話が来て、
「おふたりは将来的には法的な結婚をされるんですか?」と、聞かれた。
えっ?…さては話が通じてないな?
やっぱりむりだろ地方の信金には。考えてくれただけでも親切だ。しかし、やはり何を考えてそういう反応になったのか、内部事情を想像してしまう。
この国が婚姻を異性間に限定しているから結婚が出来ず、同等内容の公正証書を作ったのだ。私ではなく国に質問してほしい。
いつ、同性婚・婚姻の平等は達成されるんですか?
さて、タメ口H銀行のおっちゃんだが、翌日また電話がきて「あぁーっという間に通ったよー」とのこと。
なんか力が抜けた。
もう、いっそ敬語を全面廃止したいものだ。
敬語は滅べ